龍世祥(金沢経済大学) 「北東アジア地域の環境問題における中国の位置づけ」 T 環境問題の特質と悪循環構造の展開 北東アジア地域において多次元的に展開された悪循環システムを環境問題の視点で端的に示すと、一方、先進国の今まで経験してきた農村型環境問題、産業公害型環境問題、都市・生活型環境問題、地球型環境問題が、現在の北東アジアでは同時に重層的に存在しているのである。70代から日本を初めとして、「高度成長モデル」の東南アジアへの普及により、さらに中国の南方から北方へ急速に波及して形成した1つのアジア特有の「雁行型経済成長モデル」がその主因として考えられる。なお、環境問題の多重的深刻化を特質とする北東アジア地域の悪循環構造は中国において定着している。 U 悪循環脱却と地域システムエコ化の傾向 20世紀の末に至って、北東アジア地域において20世紀への反省として、冷戦構造の崩壊、国民環境意識の向上と、環境産業の拡大、特に環境協力の促進を中心とする地域経済エコ化が前世紀の末に始動され、今に至って前進している。民間、自治体間、2国間の環境協力事業が拡大しつつあり、多国間広域協力システムも同時に機能している。特に、2国間の実施型環境協力の拡大と多国間の協議型環境協力の具体化の接点となるのは3国間の実施型環境協力の始動である。その中には、「日中韓3カ国環境大臣会合」に基づく環境協力の進展が注目される。 V 地域経済システムエコ化へのアプローチ 地域経済システムエコ化に向かってアプローチする過程には、地域全体の実施型協力システムの母体を創出していくのは、現実的、効率的なのであろう。スタートしている日中韓三か国環境協力はそれとなりうると判断される。この中では、日本の中心的役割が期待されている。つまり、日本が先頭となり、環境産業を軸とし、日中韓の実施型体制を中核とする
「エコ型雁行モデル」の構築は北東アジア地域の重大な課題となろう。