日本現代中国学会ニューズレター
 Newsletter of The Japan Association for Modern China Studies
                          No.6  2002.4.1
                    http://homepage3.nifty.com/xiandaizhongguo/
                    E-mail: xiandaizhongguo@nifty.com
 
☆巻頭言

開かれたことば・耳を澄まして開くことば

事務局長 代田智明(東京大学)

 先日、古厩忠夫さんのお話を伺う集まりに誘われた。『「感情記憶」と「事実記録」を対立させてはならない』(『世界』01年9月)の著者をお招きして、戦争責任問題に関する日中の言説について討議しようという主旨である。テーマが重たいせいだろうか。終わった後の打ち上げになると、別の話題で散々盛り上がるくせに、討議の発言者は少数だ。これも個々人の精神と場そのものとが、開かれていないからであろう。

 ことは南京大虐殺の死者数「30万人」という中国側の主張をどう受けとめるか、に集約できる。司会が中国側の感情にも配慮が必要だ、と指摘したことに私も反対ではない。ただし言説は平等なのだから、相手の状況や文脈を理解した上で、相手にも通ずることばで語る努力は、相互の責任のはずである。開かれたことばを目指すことは、国境を超え、世界に発信するときの必須条件であろう。どこの国の人であろうと。それがいかに遅々たる歩みであっても。

 開かれたことばは、何も対外的にだけ求められているのではない。どんな分野にも、専門術語があり、独自のお作法があることは、ある意味で当然である。けれども分野を超えて、自分たちの発見や成果を伝えられなくては、広範な「読者」の反応は期待できない。そうした反応と応答を繰り返すことによってこそ、その成果は公共空間において、より意味を深めていくのだ。そもそも私たちの学会は、そんな閉じられた「蛸壺」的な分野の障壁を、乗り越えるべく存在しているのではなかったろうか。

 ところで、「開かれたことば」とともに言及すべきことがある。先の打ち上げの折り、古厩さんから「歴史と文学とでは違いますかねぇ」と問われた。おそらくは、事実認識の方法について聞かれたのだろう。とっさに私は「それは違いますよ。歴史は文章を読みませんもの」と答えてしまった。

 「文章」とは、内容と一応きり離すことのできる語り口のことである。シニフィエではなくシニフィアン。これは恐らく私の偏見に違いない。すぐれた歴史学者は、眼光紙背に徹して、行間から奥深い読み解きをする。下手な文学者ほど、ことばを平板に受け取って、イデオロギーに囚われた解釈をするものだ。私が気がかりなのは、時代や状況を踏まえたそんな文章の読み方が、最近とみに失われているように思われることである。それは耳を澄まして心を開かねば、聞こえないことばたちのことである。

 ことばとは、つねに不自由なものだ。私の信念では、鬱屈や不満のないところに、ことばなぞは生まれない。そして、鬱屈や不満の相手がある限り、そのことばは自由奔放ではありえない。ことばには、読者を味方に引き入れる戦略戦術が必要なのである。私たちが研究対象にしている現代中国とは、まさしくそれが際立った社会ではなかったか。いやそれどころか、あなたのいま書いている論文だって、それを免れている訳などないのだ。

(二〇〇二年二月二八日)

関東部会冬季研究会

 関東部会の研究集会が二人の発表者を迎えて以下のように行われました。参加者は約四十人で熱心な討議が繰り広げられました。発表者の発言要旨を掲載します。

日時:二〇〇二年二月二日(土)午後二時〜五時

場所:東京大学教養学部10号館3階会議室

研究報告 共通テーマ:WTO加盟と中国経済

司会:菊池道樹(法政大学経済学部)

今井健一(アジア経済研究所)

WTO加盟と国有企業改革

 中国では近年、国有企業民営化の動きが本格化してきている。中小企業の民営化は1990年代前半に一部地域で自発的な動きとして開始し、97年の第15回党大会と99年の第15期四中全会決定を経て全国に広がった。民営化の形態は当初、持分格差の少ない従業員所有への転換が主流だった。この方式の民営化は行政と企業の分離や労働規律の向上という点では効果を挙げた。だが従業員による均等な株式所有は、従業員全体が経営上の意思決定を左右しうることを意味し、現金配当を過大に引き上げたり、給与・雇用面での改革に抵抗するなど効率的な経営を阻害する弊害が表面化した。このため民営化のスタイルは、しだいに経営者や経営幹部に資本を集中する「オーナー企業」が志向されるようになってきている。最近ではこうした動きは比較的規模の大きい中堅企業にも及んできた。

 一方大企業の場合は株式会社への転換と上場が改革の主流となっている。しかし国有株の比率は依然として高く、株式市場は企業統治上の役割を果たせていない。さらに、党・政府がもっとも重視する企業は1999年の行政改革以降、党中央の大型企業工作委員会の直接管理の下に置かれている。同委員会は主に経営者の業績を事後的に監督するものであり、市場経済的なガバナンス主体の不在という状況の下で、代替的なガバナンスの役割を果たしている。

 ガーシェンクロンは著名な古典であるEconomic Backwardness in Historical Perspectiveの中で、資本市場の発展が不足した後発国では産業化にあたって国家が資本市場を代替する役割を果たすこと、産業化が進展すると共に国家の役割は後退することをドイツやロシアを例として論じた。現代中国もこのようなプロセスのただ中にあると考えられる。

 

阮蔚農林中金総合研究所副主任研究員

大きな試練を迎える中国農業

 中国は昨年末に念願の世界貿易機関(WTO)加盟を果たした。WTOとの合意によれば、中国の農産物全体の平均関税率は041月までに15.8%へと、いきなり先進国並みの水準に引き下げられる。政府による農業保護ができる限界(農業生産高に対する補助金の上限)も、途上国の10%と先進国の5%の間を取って、中国を特別扱いにする8.5%という枠が設けられた。
 それによって、中国の農産物市場の扉が世界に向けて大きく開かれ、中国農業がアメリカなど強い競争力を持つ農業産品輸出国から受ける衝撃の大きさは計り知れない。中国は、約1億5000万人の余剰労働力を農業分野に抱え、その労働力一人あたりの耕地が日本の3分1しかなく、国内穀物価格が国際価格を大幅に上回っている。WTO加盟で海外の小麦やトウモロコシ、植物油などが押し寄せ、農家所得のさらなる低下が避けられない。この結果、もともと厳しい農業の雇用状況が一層悪化し、看過できないほどの農工間所得格差はさらに拡大し、社会の安定も揺らぎかねない。
 加盟により大きな打撃を受けるのは確実だが、加盟しなかったら農業が救われるという保障はない。加盟交渉の15年間、農業への資本投入不足や、生産性などを向上させるのに役立つ農協組織の不備と所得低迷、流通、効率の悪い農業政策を生む縦割り行政など、農業サイドの問題が認識され、改善も呼びかけられたが、既得権益や惰性によって大きな改善は一向に見られなかった。
 中国は30年後に約16億にもなる巨大な人口に十分な食料を提供しなければならない。一方、今でも5億人以上が住む地域で深刻な水不足に見舞われており、砂漠化、公害の蔓延が続いている。一歩間違えば、この20年に培われた初歩的な繁栄は、農業の混乱で一挙に崩れる恐れがある。そういうの背景の中で、中国首脳部は、市場開放という劇薬を使って、短期的に混乱が生じても、長期的には農業競争力の向上を手にする、という危険なかけに出た。

 

関西部会春季研究集会

「若手研究者の現代中国論」

 毎年恒例の大学院在籍者を発表対象者とした関西部会春季研究集会が下記のように行われました。今年は例年より参加者がやや少なく全体で七十名程度でしたが、午前中から夕方まで十二名の報告者による熱心な討論が行われました。研究集会終了後、近隣のビアホールで懇親会がおこなわれ、ここにも二十九名の会員が参加し約二時間なごやかに懇談しました。

日時:二〇〇二年三月二日(土)午前十時三十分〜午後五時三十分

会場:大阪市立大学文化交流センター(大阪駅前第三ビル,一六階)

政治経済分科会

司 会:宇田川幸則 (関西大学)

報告者                       コメンテーター

邵倫 (愛知大学院生)             西村成雄(大阪外国語大学)

同時多発テロと国際法の対応および中国に与える影響

 本報告は、9・11事件から、米国の反テロ戦争を国際法の角度からテロリズムの定義及びその報復戦争の合法性・正当性を検討し、戦争が中国に与える影響を分析した。

 ブッシュ大統領は事件を戦争だと非難し、反テロ戦争を起こした。法的根拠から見て、復仇戦争は国際法・条約違反である。また、裁判管轄権は米国にあるが、引渡しに関する権利の規定より、裁判権がハーグ条約の締約国アフガニスタンの執政権タリバンにある。被疑者を国内法に照らして処分する事は、被請求国の国際法に合致した権利である。

 反テロ戦争が中国に齎す影響は以下の通りである。まず、抑制は対中戦略の基礎となる。反テロ同盟は中米関係の改善に契機を齎すが、根本的変化は生れない。つぎに、中米両国はテロリズムの認識において大きく相違し、両国関係の発展に不良な影響を与える可能性がある。そして、地政学的戦略及び中東・カスピ海における石油利権から、米国は当該地域におけるシーレーンの存在を一層追求する。一方、中国の持続的経済発展によって、当該地域諸国との全面的な戦略関係の樹立、石油輸送線を確保することは、対外関係とりわけ安全保障上の課題である。最後に、中国は米国の国際・国内テロリズム打撃情勢の下で、国際テロ組織と直接的に関係し、独立・分離テロ活動をしてきた東突テロ組織取締りに対する批判を、反テロ戦争に便乗してかわし、分裂主義打撃を本格的に打ち出した。他方では中央アジア五カ国との反テロ協力によって、重要な戦略的地域における地位の増強を進めようとしている。 

 結論としては、特定国の一方的な判断で行う軍事活動を容認・追認するではなく、国連の下で制裁措置を発動し、また、対テロ活動の国際条約・国際法が各国の協調の下で改正・制定されることも急務である。

 流動化する米中関係の中で、反テロを巡る一層の対話と協調が短期的関係改善には有利であるが、問題認識の根本的相違が安全協調への対話方向に影響することも想像できる。

 

報告者                          コメンテーター

霍麗艶(大阪市立大学・院生)           王晨 (大阪市立大学)

中国会社法における監査役制度の現状と課題

 中国は、1994年4月1日から会社法を実施し株式会社制度を採用したが、会社経営のメカニズムを徹底的に転換していない。一部の上場会社では企業収益の低下が続いており、赤字経営の上場会社も増加している。株式制度に対して立法上、実務上の経験を欠く中国においては、特に、政治、経済の事情が先進国のものと相当異なり、会社経営に対する国家の行政権力の介入から企業を解放し、会社経営の独立性の強化を最も重視する今日においては、健全かつ効率的な会社運営を図るために経営者支配に対する監督システムを構築することが、今後の改正作業を含む中国会社法にとって極めて重要かつ緊急の課題となっている。

  中国会社法は、全ての株式会社に監査役会の設置を義務を付け、監査役会は株主代表と一定比率の従業員代表から構成され、株主を代表する監査役は株主総会で選任、解任されるが、従業員を代表する監査役は従業員の投票により選任される。監査役会の権限は会社財務及び業務執行の監査であるが、これは違法性監査にとどまる。そして、監査役会は合議体機関であるため、取締役会への出席権を除く他の権限が各監査役に与えられず、監査役会によって行使される。中国会社法は、監査役会の権限について概括的かつ抽象的な規定をしているに過ぎず、具体的な操作性が欠如している。それに加え、取締役会会長による業務執行の監督は、実際上取締役会会長と支配人の兼務が多いので、自己監督の矛盾を抱えている。このように法制度上各機関の権限関係の不明確性,概括性及び権限分配の不合理性、かつ実効性を確保するための措置を欠いているので、中国会社法において経営者に対する監督体制が確立されているとは言い難い。実務上、会社法実施から僅かの年月しか立たないうちに,企業統治に対して諸外国、特に日本が抱えている課題に、中国も容儀なく直面している。

 昨今、日本商法の抜本改正が検討される中、取締役会の改革とともに、日本の監査役制度がどう変わっていくかが注目され、そして近時、米国型監査委員会制度を導入する志向も現れる。2001年8月16日、中国証券監督委員会は「上場会社における社外取締役の設置に関する指導意見」を公表した。しかし、米国型監査制度を支えてきた基盤が、中国の会社体制に十分に定着しないままに単に制度を模倣することは、よい効果を収める可能性が低い。むしろ先進国の経験と教訓を充分に参考しながら、積極的に監査役の監査機能を強化させる方向で改革していくほうが妥当ではないか。特に、日本の監査役制度の成長過程、制度上の問題点、経験、教訓及び近時の改革の動向に鑑み、日本の実践により証明された中国の現状に適合する有益な経験とやり方が、中国における株式会社の実情に相応しい監査制度の構築に重要な意味を持つであろう。中国会社法における経営者に対する内部監督システムの整備が必要であるが、監査役制度の改正策としては、監査役の独立性を支える基盤の整備、社外監査役制度の導入、監査役独任性への改革、監査役権限及び責任の充実等が適当であると思われる。そして、情報開示制度の充実及び外部監査制度のあり方を検討すべきである。

 

報告者                          コメンテーター

渡辺直土(大阪外国語大学・院生)         加藤弘之(神戸大学)

現代中国の農村税費改革と村民自治 −「農民負担」問題の解決へ−

 現代中国において農村を安定的に統治することの重要性は周知の通りだが、その中で幹部と農民の関係を緊張させる最も大きな要因として「農民負担」の増加があげられる。生活苦から来る農民の暴動の発生などはしばしばメディアにより報道されている。中国共産党および政府はこの問題が政権の安定にかかわる重要な問題であると認識し、解決のためにさまざまな改革が試みられている。現在国内外で注目されている村民自治もそのうちの1つであろう。「農民負担」との関連でいえば、1998年制定の「村民委員会組織法」では村の財政に関することを村民会議で討論することを義務づけている(第19条)。また村民代表会議の役割も強化され、村の財政に対する監督を強化しているという事例も報告されている。しかし農村基層において財源が絶対的に不足しているため、村民自治の実施だけでは郷鎮幹部が農民に対して恣意的に行う資金の徴収を防ぐことはできない。そこで四川省や広東省の一部地域では郷鎮長の選挙制度に改革が試みられており、今後これらの改革が全国に広まるのかどうかということが大きな焦点となろう。

 またより構造的に問題を解決するために、2000年以来一部地域で農村税費改革が進められている。郷鎮政府の財政構造を改革し、政府の支出を減らすことによって「農民負担」を減らすというこの改革は安師省や江蘇省などで試験的に進められ、2002年は更に実験地を拡大すべきであるとされている。この中で特に注目したいのは郷鎮政府機構の改革であり、機構を合併、廃止し簡素化することによって、政府の財政負担を減少させたという事例が報告されている。これは現在進められている行政改革との関連を考えても重要である。市場経済化に対応し、「小政府、大社会」を実現するため、1998年以降中央以下各行政レベルで政府機構の簡素化が行われている。つまり郷鎮政府機構改革は「農民負担」の減少と市場経済化への対応という2つの側面を持った改革であり、今後の展開が注目される。これからは行政改革の理論的枠組みから更にこの問題に接近しようと考えている。

  

司 会:上原一慶(京都大学)

報告者                          コメンテーター

馬瑞萍(神戸市立外国語大学院生)         古澤賢治(大阪市立大学)

中国の工業現代化の促進戦略に関する一考察−経済体制改革の推進方式について

 本報告は、中国の工業現代化を促進する戦略、とりわけ経済体制改革で直面している「摩擦コスト」に関する問題に焦点を当て、改革推進モデルのあり方を、漸進式にすべきか急進式にすべきかの議論を越えて問題提起したものである。

 著名な経済学者綱氏が提起した「摩擦コスト削減論」は、「摩擦コスト」削減条件として、経済的初期条件、外資の大量利用、新体制への成長促進を挙げていた。1990年代後半以降、中国では全国で一律に体制改革が加速された傾向が見える。しかし、これまでの改革過程では「摩擦コスト」は解消されてきたのではなく、むしろ高める側面も有している。それは特に各種の地域間格差、失業者増加、歴史の遺留問題などの面から窺える。

 綱氏が示した「摩擦コスト」の概念には、歴史的な負債として残されている社会的コストに対する配慮がかけている。例えば、かつての「上山下郷」運動の参加者は、現在の国有企業改革でもろにリストラの対象とされている。彼らのほとんどは、かつて農村地域で農業生産総額の増加に、引いて言えば、中国の工業基盤形成期の原始的蓄積に貢献してきたが、その歴史的な貢献に対する配慮を抜きに淘汰されるのでは、社会的不満の高まりが「摩擦コスト」として改革の進展を大きく妨げる恐れがある。また、歴史的に残された問題は現在、内陸地域の開発とも関連する。改革の加速は経済の成長促進が必要とされる。中央政府が提起している西部開発は「西電東送」とか「西気東輸」といった資源開発に目玉が置かれている。この構想は、国全体の成長率の上昇、及び産業構造の高度化が緊急課題になっている沿海地域の改革には支えになるが、西部地域にとっては必ずしもベストの選択だとは言えない。今日に至っても、沿海地域傾斜的な戦略の継続は、地域保護主義的局面を招き、結局、沿海地域と西部地域の改革テンポを共に遅らせてしまう恐れがある。

今後、改革を加速させるためには、改革方式は急進式か漸進式かといった次元でなく、歴史遺留問題への対処を含む各方面のことを、より総合的に配慮しなくてはならない。沿海地域の改革に必要な成長促進は、西部からの資源供給促進と西部地域でその資源の付加価値が上昇できるような産業の育成とを同時に考慮する必要がある。つまり、東部の成長促進に必要な量の天然資源を利用して東・西の2地域の成長促進と経済体制改革に同時に貢献させる努力が必要である。

 

報告者                        コメンテーター

白石麻保(京都大学・院生)            金澤孝彰(和歌山大学)

中国における公営企業民営化の特徴とその合理性−無錫郷鎮企業を中心とする   

 本報告の課題は中国における民営化推進に見られる諸特徴の企業の生産性及び利益性上昇の意味における合理性の有無についての解明である。本報告では,特に郷鎮企業を中心に分析が進められる。はじめに本報告の背景に,近年の中国における民営化が管轄政府主導で行われていること、そして中文先行研究でこの管轄政府主導による民営化が企業の生産性及び利益性の上昇を必ずしも実現できないという議論が展開されていることが紹介された。続いて具体的な分析が行われる。まず,江蘇省無錫市及び上海市南匯県における企業聞き取り調査及び民営化推進の特徴についての計測結果より,民営化進程過程には@国有企業,都市集団企業では相対的に競争力がある業績のよい企業から民営化を開始していること,その一方でA郷鎮企業では小規模企業から民営化を開始していること,等の傾向が見られ,民営化後の企業経営には,同じく江蘇省無錫市及び上海市南匯県における企業聞き取り調査より@国有企業,都市集団企業,郷鎮企業いずれにおいても生産,経営コストの削減等の企業改革が積極的に行われていること,A国有企業,都市集団企業では従業員のリストラが積極的に行われる一方で郷鎮企業にはリストラに対する消極的姿勢が過渡的に見られること,B郷鎮企業では資金調達面においては管轄政府のバックアップを受けていること,等が明らかになった。次にこれらの民営化推進下低の諸特徴の企業の利潤への影響を特に郷鎮企業における管轄政府による資金調達時のバックアップに注目して分析するために企業の利潤関数が推定される。これにより@民営化に伴う企業の経営改革は企業の利潤増加にプラスに影響すること,そしてA郷鎮企業においては資金調達時における管轄政府のバックアップは利潤にプラスに影響することが明らかにされた。以上より中国における民営化は改革されるべき要素と継続すべき要素が考慮されながら,一定の合理性を持って進められている,と結論付けられる。

(本報告は矢野剛氏(徳島大学総合科学部)との共同研究の成果の一部である)

 

報告者                        コメンテーター

北波道子(関西大学・院生)            松本充豊(神戸大学)

1950年代台湾の電力と公営企業

 1980年代後半から、台湾はNIESの優等生として国際社会で評価されるようになった。台湾はいわゆる輸出指向型の経済発展を遂げ、中小企業を中心とする輸出加工業が経済発展の牽引車であるといわれる。しかし、1945年以降1980年代末までの国民党政府による一党独裁支配下で、具体的な経済発展奇跡を研究する自由はなかった。そこで、独裁と経済発展という2つの「事実」を連結させて、権威主義政府による「上からの開発」の好例という「台湾経験像」が描かれるようになった。とはいえ、実際には国民党政府による資源のコントロールと結果的な経済発展を結び付ける証拠は提示されていない。果たして、台湾の経済発展を国民党政府による積極的な経済開発の成果とみなすことができるのだろうか。答えは否である。

 輸出指向型発展を開始する直前の1950年代台湾では、公営企業が総資本の3〜5割、製造業生産高の5割強を占め、大きなプレゼンスを示していた。特に製造業の公営企業は、電力、化学肥料、砂糖など、市場を独占する大企業がほとんどで、相互に連動しながら国民党政府が台湾から資源を吸い上げるシステムを構成していた。発電所はアメリカの経済援助によって建設されたが、援助はソフト・ローンであり、開発資金は結果的に電気料金に転嫁されて返還され軍事建設などに回された。電力の主要な消費者は公営企業であり、特種契約者として電気料金の優遇を受けた。特に台湾肥料公司は最大量を最低料金で消費したが、同社が製造した肥料は米肥バーター制度や分糖制を通じて農民から不等価で米・砂糖を徴収するために使用された。徴収された米や砂糖は政府の重要な財源となったが、こうして生み出された歳入は工業化ではなく軍事防衛のために費やされた。つまり、台湾の工業化の成功要因は政府による資源のコントロールではなく、膨大な軍事費を搾り取られながら、なおかつ経済発展をもたらすだけの資源を持ち得た、基層の生産力にこそ存在したといえよう。

 

歴史文学分科会

司 会:谷行博 (大阪経済大学)

報告者                          コメンテーター

賈笑寒(大阪外国語大学・院生)          松浦恒雄(大阪市立大学)

『女神』の構造−テクストの成立−

 郭沫若の戯曲詩歌集『女神』の初版本には作品64篇(「序詩」1篇、三つのブロックに分けられている詩60篇及び戯曲3篇)が収められている。これらの詩を執筆の順序で並べ替えてみると、初版本『女神』の構成順序と執筆の順序が非常に異なっていることがわかる(リスト略)。そして、執筆の順を追って『女神』に収められている詩のスタイルを分析すると、言語表現の変化により、これらの詩の創作を三つの段階に分けることが可能である。

この三つの段階を経て、郭沫若の詩は男女の情愛や悲哀、憂愁を表現するスタティックなものから、個性の主張や生命力の高揚などの理想主義的な感慨を謳うダイナミックなものに変身して、また感情の抑制がみられるスタティックなものに回帰したのである。

郭沫若自らによって編集された『女神』は、初版本の『女神』、19286月版の『女神』(『沫若詩集』所収の『女神』)、19308月版の『女神』(『沫若詩全集』所収の『女神』)、1944年版の『女神』(『鳳凰』所収の『女神』)、1953年版の『女神』と1957年版の『女神』(『沫若文集』第1巻所収の『女神』)という6種類がある。第二期の詩に時代の要求に応え、変革の時代精神を鼓舞したものが多いため、改版されるたびに、内容と排列がもっとも多く変えられている。

 『女神』の中で、この60篇の詩は二つのブロックに分けられている。これを執筆の順番に照らし合わせて見ると、主に第二期の詩が最初のブロックを占め、第一期と第三期の詩がその次のブロックにまとめられている。このようにブロック分けしたのは、詩の言語表現の特色において、第一期と第三期が極めて近く、これに対し、第二期は特異な存在だからであろう。また、第二期の詩のほとんどは、時代精神が正確に表現された最初の新詩であると称賛され、郭沫若の名を世間に広めた名作であり、彼の代表作でもある。そこには、彼の生きた時代、そして、彼自身が認める真の詩人が存在していたからであろう。

 

報告者                        コメンテーター

鎌田純子(関西大学・院生)            濱田麻矢(神戸大学)

『秧歌』から見た張愛玲の文学

 張愛玲は1950年代、香港滞在中に『秧歌』を執筆した。『伝奇』において専ら都会を小説の題材にしてきた張愛玲が突然『秧歌』で農村に舞台を移したことから、この作品は今まで多くの論者から「反共小説」「駄作」という評価がなされてきた。このように一旦「反共小説」というレッテルを貼られると、その思想性だけが強調され、作品のもつ別の側面が薄れてしまうのは否定できない事実であろう。

そこで本発表では1.『秧歌』を構成する主な要素2.張愛玲が英訳し、反共小説として広く読まれた陳紀N著『荻村伝』と『秧歌』の構成の比較3.胡適の『秧歌』評の紹介4.『秧歌』と『伝奇』の関連性、以上4つの観点から『秧歌』の見直しを試みた。

その結果、『秧歌』はやはり『伝奇』で打ち出された「読者の思想を啓蒙しない」「時代の記念碑となる作品は書かない」という張愛玲文学の姿勢を受け継ぎ、飢餓に瀕しながらも最後まで人間としての尊厳を保とうとする農民の姿、また農民と同じ厳しい制約の下、任務を全うさせようとする共産党幹部たちの克己的、禁欲的姿勢などの人間像そのものが『秧歌』のもつ意義であると結論づけた。

従って本発表は『秧歌』は反共小説ではない、という証明を行ったのではなく、作品の再評価を中心に置いたつもりであったが、発表の構成上、前者に捉えられてしまう可能性が高かったようだ。また今回の発表では取り上げなかったが、『秧歌』の3ヵ月後に書かれた張愛玲の『赤地の恋』、『荻村伝』以外の50年代に書かれた他小説との比較も今後の重要な課題である。

 最後に大阪市立大学の松浦先生から多くのご教示を賜り、コメンテーターの濱田先生から今後の進め方についてヒントをいただいた。この場をお借りして感謝を申しあげます。

 

報告者                        コメンテーター

菅原慶乃(大阪大学・院生)            張新民(大阪市立大学)

中国映画“第五世代”をめぐる言説の再考察

 現在、<代>をめぐる議論(以降本稿では総じて<世代論>と称する>は、主に<第五世代>と呼ばれる一群の監督達に注目が集まる場合が多いが、本稿は<世代論>の意味論的・統辞論的アプローチから離れ、それを言説として考察したい。<世代論>を言説としてとらえることは、それを1980年中国大陸の映画事業及び"文化熱"にあったナショナル・アイデンティティの諸問題へ連結させることを可能とする。<世代論>言説の考察は、1980年代大陸映画事業の様々な力関係とアイデンティティの問題に広げていくという研究の方向性の開拓が可能であると考える。実際<第五世代>という言葉を誰が一番始に発したかは分からないが、1986年には邵牧君等"反対派"と鄭洞天等中年世代"肯定派"の間で<第五世代>議論が頻出するようになる。紙面の関係上ここでは"肯定派に注目したい。当時<学院派>とも呼ばれていた彼等はいわば映画界の知識人であるが、<第五世代>を文革以降取り組んできた彼等の映画の現代化運動の後押しになると見なし、自ら<世代論>の中に入りこみそれを擁護することで、"文化熱"で注目された潮流−<文化尋根> <探索> <反思>−に入りこんで行った。やや乱暴に概括すると、<世代論>議論は実は映画製作や立場をめぐるヘゲモニー争奪戦であり、結果としては"文化熱"における言説的実践によって言説化されたのだった。<民>による<われわれの文化の再構築>ともいうべき"文化熱"において<世代論>言説は次第に<われわれ>のアイデンティティ形成の様相を呈していく。<世代論>言説によるアイデンティティ形成は、不断に<第五世代>作品=<新しい中国文化>を<創造>し自らの存在根拠したという点で、文化のイデオロギー装置としての機能を持っているといえる。同時に<世代論>言説はすでに<実体化>されたもの、フェティッシュ化されていることも注目されるべきだろう。それは、<世代論>を根拠とするアイデンティティ論争にみてとることが可能だである。最後に、こうは言えないだろうか; 全ては<第五世代>にはじまり、<世代論>の存在はそれを欲する群集の<享楽>によって<存在>しえる。

 

司会:安井三吉 (神戸大学)

報告者                        コメンテーター

長澤靖典(兵庫教育大学大学院生)         鉄山博(大阪商業大学)

清末内蒙古における官弁墾務事業と西路墾務公司事件について

 本発表は、清代の伊克昭・烏蘭察布盟における開発について、特に清末20世紀初頭の官?墾務事業の実態について考察を進めていくものである。

?墾務のシステムは、清朝の特務機関である墾務局が半官半民の墾務公司に殆どの土地を丈放させ、そして漢人農民に小口で土地を分配させるというものであった。事の発端は、光緒27年(1901)に山西巡撫岑春が当地の開発を朝廷に奏請したことに始まるが、それ以前においても、張之洞、剛毅、胡聘之といった歴代の山西巡撫が、当地の開発を朝廷に進言していた。しかし、清朝は、内蒙古において清初より強大な軍事力を抑えるために、“蒙旗封じ込め政策”とも言うべき「蒙地封禁」政策を採っていたこともあり、張之洞ら歴代山西巡撫の進言は採用されなかった。では、いったいどうして光緒28年にいたって、清朝は「蒙地封禁」政策を放棄して伊克昭・烏蘭察布盟の開発に乗り出したのか。それは、清朝を取り巻く国内外の情勢にあった。

鉄山博氏はこれについて、「清朝は1840年の英国とのアヘン戦争以来、列強との度重なる紛争によって多大な賠償金をかかえるとともに、国力も疲弊させてきた。清朝は、1900年の義和団事変敗北後、政権の延命をはかるために、政治、財政、軍事、教育、産業の全面的な近代化的改革、「新政」を採らざるを得なかった。清朝は、官?墾務から上がる利益で、財政不足を補うとともに、近代的な装備を備えた軍隊の創設に役立てようとした。まさに、官?墾務は「新政」の一翼を担うものと期待された。」と、述べている。

「新政」の一翼を担うと期待された官弁墾務も、墾務大臣貽穀の指示の下、墾務公司が公金横領を行い貽穀が弾劾され頓挫することとなる。この墾務公司による公金横領を「西路墾務公司事件」という。今回の報告は、この事件の内容を主として分析していくことで、官墾務事業の実態を明らかにしていくものである。また、はたして「新政」の一翼を担えたかどうかについて検討していくものである。

 

報告者                        コメンテーター

武井義和(愛知大学・院生)            小浜正子(鳴戸教育大学)

戦時下上海朝鮮人居留民のアイデンティティについて

 本報告は文献史料と、韓国人の証言をもとにまとめたものであり、不完全かつ初歩的な報告である。

 かつて上海に存在した朝鮮人居留民は、「日本国籍」を有しつつ一方では被支配民族として、日本総領事館や領事館警察を中心とする日本官憲の身分捕捉を受けていた。しかし証言から、日本側による戸口管理や移動に関する身分捕捉が必ずしも完全なものではなかったのではないか、という仮説的見解を導き出した。また、1935年に親日派朝鮮人によって組織された「上海居留朝鮮人会」による朝鮮人居留民管理の意図と不徹底の現実、そして日本人町内会では、例えば民族意識が濃厚で防空演習や自警団などの町内会務に参加しない朝鮮人居留民がいても、必ずしも取り締まったり監視していたのではなかったということを証言から得た。

 彼らをめぐる環境が仮に上記のようなものだったならば、形成されるアイデンティティ(本報告では「帰属意識」とする。以下同様)はどのような様相を示したのかについて、日本敗戦当時10代半ばであった5人の証言をもとに考察を試みた。

 彼らは何れも日本人居留民団(上海居留民団)が運営する小学校や高等女学校・中学校などで教育を受けていたが、4人が「朝鮮人意識」を、1人が「皇国臣民意識」を抱いていたという。日本人子弟と同一の教育を受け、殆ど差別経験がなかったようだが、にも拘らず帰属意識がこのように分岐した理由については、日本人教師・日本人子弟による差別の有無や度合いという問題のほかに、1)家庭での日本人との接触度の高低および両親の日本語理解度の高低、2)町内会務不参加などのような家庭での民族意識発露の有無、といった家庭環境の相違が大きな影響を与えていたのではないか、という仮説的結論を示した。

 

報告者                        コメンテーター

久保純太郎(神戸大学・院生)           田中仁(大阪外国語大学)

戴季陶の東アジア国際秩序認識に関する一考察−朝鮮問題をめぐって

 本報告は、戴季陶の朝鮮問題(「朝鮮独立の国際法上の根拠として下関条約に注目し、それに日本が違反することによって生じた」問題、という森悦子氏の定義をとる)に対する認識と、それに関わる日本認識、中国認識、中国革命に対する認識、孫文「大アジア主義」に対する解釈を取り上げ、戴季陶の東アジア国際秩序認識(すなわち、前にあげた諸認識の関係と、諸認識から構成される中朝日関係に対する現状認識と理想像)を明らかにすることを目的とした。

 戴季陶研究においては、戴季陶の日本観察の正確さや、中国革命の理論と三民主義との関係を中心に考察されてきた。本報告が取り上げた戴季陶の朝鮮問題に対する認識や、東アジア国際秩序については、まだ十分に検討されてこなかった、といえよう。

 一方、ナショナリズムやアジア認識に関する思想史研究においては、村田雄二郎氏や山室信一氏が20世紀前半の思想のダイナミズムを取りあげられた。本報告は戴季陶という個人の思想的営為を通じて、20世紀前半の思想潮流を見ていったことになる。

 本報告では、戴季陶の辛亥前から1930年代の文章を史料として用いた。用いた文章は戴季陶の文集、漢日両文の文集・新聞・雑誌から収集した。

 本報告の構成は次の通りである。

T 1910年代の東アジア国際秩序認識

 (1)韓国併合に対する認識  (2)世界の思潮の受容

 (3)東アジア国際秩序認識の形成――近代化の負の側面としての朝鮮問題

U 1920年代の東アジア国際秩序認識

 (1)日本の「大アジア主義」と孫文「大アジア主義」

 (2)「国民革命」論の形成――三民主義の解釈

 (3)東アジア国際秩序認識の展開――アジアの中心の中国というナショナル・アイデ

    ンティティの形成,朝鮮問題で日本のアジア主義を批判

V 1930年代の東アジア国際秩序認識

 (1)抗日戦争時期の日本認識

 (2)東アジア国際秩序認識の変容――中国の抗日と富強

 

☆研究集会予告

西日本部会春季研究集会

 西日本部会が出発してからまもなく3年になろうとしています。三周年記念というわけではないのですが、第一線で活躍中の方々を中心に、現代中国に関する充実した研究発表を用意しました。アジア及び中国に関心のある方々をお誘い合わせの上、ご参加下さい。今回も市民に開かれた研究集会として開催します。

日時:4月6日(土)午後一時三十分(一時開場)

会場:九州大学六本松キャンパス・本館二F第二会議室

松岡純子(長崎県立大学)「華文文学国際会議(サンタバーバラ)についての報告」

横地 剛(九州大学講師)「台湾民衆の大陸・台湾両岸問題−台湾二二八事件55周年を迎えて」

小竹一彰(久留米大学)「中国共産党12期中央委員の定量的分析」

木幡伸二(福岡大学)「中国自動車産業の課題」

 連絡先:(092−4502−4670 九州大学・岩佐昌ワ研究室)

日本現代中国学会西日本部会事務局(福岡大学人文学部気付) 山田敬三

 

関東部会修士論文発表会

日時 二〇〇二年四月二十日(土)

場所 東京大学教養学部

発表者などは後日連絡します。ホームページをご注意ください。

 

関西部会夏季研究集会

日時:七月六日(土)午前十時半より午後五時半まで

 *当初、六月二十九日(土)と連絡しましたが、この日がアジア政経学会西日本大会と  重なっていることがわかったので、変更しました。

場所:関西大学百周年記念会館(阪急千里山線関西大学前下車)

 *会場も変更になっていますのでご注意ください。

 *研究集会終了後、午後6時頃より懇親会を関西大学百周年記念会館で開催します。

自由論題 発表者公募中。四月二十五日締切り。詳細は関西部会事務局まで。

共通論題 第16回党大会を迎える中国

 政治・経済・歴史・文学の各分野よりパネラー・討論者をたて、多角的に表題の課題を検討します。詳細は後日連絡します。内藤昭理事より以下のような共通論題企画の文章が寄せられています。

 

シンポジウム:『第16回党大会を迎える中国』に寄せて

内藤 昭(大阪市立大学名誉教授)

 第16回党大会を迎える2002年は中国の歴史におけるきわめて重要な年である。

 今大会の最大の焦点である指導部人事では大幅な世代交代が進み、江沢民総書記(国家主席)ら70歳以上の第3世代から、胡錦涛政治局常務委員(国家副主席)など60歳前後の第4世代に引き継がれる見通しである。さらに、注目されるのは江沢民総書記が提起した「3つの代表」思想に基づく私営企業経営者の入党解禁問題である。この問題に関連して、『人民日報』元旦社説は「新しい時期の人民内部の矛盾を正しく処理しなければならない」と指摘している。労働者階級の政党から国民政党への脱皮には、乗り越えなければならない「人民内部の矛盾」が発生する可能性を示唆しているように思われる。何れにしても社会主義市場経済、つまり経済の分野において形成された社会主義・資本主義混合経済体制が、私営企業経営者の入党解禁によって、政治の分野においても社会主義・資本主義混合政治体制の形成へと進むことになろう。したがって、第16回党大会は中国社会が総体として社会主義・資本主義混合社会を確立する歴史的な転機となる可能性がある。

 第4世代の前途には多くの課題が存在する。WTOに加盟した中国は、本格的に世界経済の荒波を乗り越えて進む新しい旅路へ船出することになる。国交正常化30周年を迎える日本との関係では、歴史認識問題や経済摩擦問題など時には厳しい局面を迎えながら、友好関係の強化と経済交流の拡大を図ることになろう。さらに、腐敗の深刻化と政治体制の民主化、安定成長期に移行しつつある国民経済の持続的発展と改革の徹底、西部大開発と少数民族対策、経済格差拡大や環境問題への対応、東南アジア・中央アジア諸国との地域協力、台湾問題にかかわる対米政策、北京五輪による国際協調と経済への波及効果など枚挙にいとまがない。

 第16回党大会という中国の新しい歴史的転換点を迎えるにあたり、政治、経済、歴史および文学などの諸分野を中心に、第3世代の中国社会を総括し、第4世代の中国社会を科学的に予見する試みは、極めて意義深いものと思われる。

 

☆事務局短信

ホームページアドレス変更

 現中学会ホームページは開設以来村田理事の個人サイトに間借りしていましたが、二月三日より現中学会独自のホームページ、メールアドレスを獲得しました。それに伴い、トップページのデザインも一新されました。ニューズレター全号バックナンバー、『現代中国』目次、全国大会開催一覧などのほか、研究会の日程変更など学会の連絡事項が郵便通知にさきがけて迅速に掲載されていますので、定期的に覗いてください。新しいアドレスは次の通りです。

日本現代中国学会事務局のメールアドレス :xiandaizhongguo@nifty.com

ホームページURL           :http://homepage3.nifty.com/xiandaizhongguo/

ホームページリンク集協力のお願い

 ホームページ改装に伴い、会員ページのリンク集作成を始めました。現在、二十一名の会員のホームページとリンクしていますが、まだ少数です。ホームページを持っている会員でリンク集に載っていない会員は、事務局までご一報いただければ幸いです。また、メールアドレスを学会に届け出ていない人も、事務局まで連絡をお願いいたします。

本年度全国大会日程決定

 本年度の全国大会は昨年の総会で新潟大学に決定していましたが、このほど日程が確定しました。十月十九日(土)、二十日(日)です。多くの会員の参加をお願いします。

ニューズレター送付方法

 前号でお知らせしましたように、今回からメールアドレスを持っている会員にはメールで送付することにしました。今回は初めてのメールによる送付であり、比較的簡便なhtmlファイルで送付します。今後よりよい方法を研究しますので、ご意見をお寄せください。


日本現代中国学会  http://homepage3.nifty.com/xiandaizhongguo/

全国事務局(関東事務局を兼ねる)

〒153-8902 都内目黒区駒場3-8-1 東京大学教養学部中国語研究室気付

電話 03-5454-6420   E-mail :xiandaizhongguo@nifty.com

(連絡所)

〒112-0012 都内文京区大塚6-22-18 社団法人中国研究所

電話 03-3947-8029 FAX 03-3947-8039

 

関西部会事務局 

〒562-8558  箕面市粟生間谷東、大阪外国語大学・西村成雄研究室気付

TEL.FAX 0727-30-5242 または072-848-3424

E-mail : ttym@daishodai.ac.jp (総務・全般) ir8h-st@asahi-net.or.jp (編集)

西日本部会事務局

〒814-0180 福岡市城南区七隈八丁目19-1福岡大学人文学部・山田敬三研究室気付

TEL:092-871-6631(代) Fax:092 -864-2864  E-mail :kyamada@fukuoka-u.ac.jp


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