日本現代中国学会ニューズレター

NO.5 2001.12.1

http://homepage2.nifty.com/t-murata/


☆巻頭言

21世紀を迎え、新たな学会の発展をめざして

      理事長 高橋 満(帝京大学)

 2001年は新世紀の最初の年であり、我が日本現代中国学会が50周年を迎え、第2の半世紀に入る節目の年であります。昨年の京都大学大会では、「現代中国研究の50年」を政治、経済、歴史、文学の面から総括することで、20世紀の中国研究のレヴューを行いました。参加者が270名を越える空前の大会となりました。今年は、それをふまえて10月20、21日、大東文化大学板橋校舎で、「21世紀中国のグローバル化とナショナル・アイデンティティ」と題して、政治、経済、思想面からの報告をもとに、充実した討論が行われました。また、会員数も700名に達しようとしています。

 今51回大会総会では、新たに「ニューズ・レター」を発行すること、正式に「ホームページ」を開設することが決定され、学会の内外に対する情報メディアの充実が計られることとなり、我が学会も「IT元年」を迎えました。

 このように、我々の学会も21世紀を迎え、量的にも質的にも充実しつつあることはたいへん喜ばしいことです。

 然し、このことは学会の社会的責任がより大きくなったことを意味するのではないでしょうか? そのための、学会としての新たな活動が要請されていると思います。

 昨今の日中関係の対立・摩擦は我々中国研究者にとっても誠に憂慮されるところです。「歴史教科書」、「首相の靖国参拝問題」の再来は日中の歴史認識格差を際立ったものにしましたが、依然として日中関係は20世紀の負の遺産を新世紀に持ち越していると言えましょう。明らかにこの背景には、「嫌中意識」の広がりがあります。90年代半ばに頂点に達したかに見えた日中相互の関心の高まりは97年の「アジア通貨危機」を境に反転しています。

 特に、最近では中国経済の國際的プレゼンスの増大に対して、日本発「中国脅威論」や「元安元凶論」に基づく「元切り上げ」論まで飛び出している始末です。

 一方では、中国の人々の対日観がこのところ大きく変化してきているのではないでしょうか? その背景には、外貨3000億ドル(含香港)に代表される中国の経済大国化が現実のものになりつつあり、「世界の工場」としての地位を揺るぎないものにしつつあるという事情があリます。広大な国内市場に加えて、アメリカ市場、東南アジア市場で、日本の独壇場であった電機機器やオートバイさえも市場占有率を高めている。つまり、中国は自己の地位の上昇を意識し、精神的に余裕を持って対日関係に対しているように見えます。

 こうした中国の動きは、國際認識の深化を背景に新しい展開を示しています。これと対照的に日本こそが20世紀的アジア認識に止まっており、その遺産を引きずっていると言えましょう。そのために、WTO加盟で一層國際的立場を強めた中国は、東アジアでASEANとの「自由貿易圏」協定交渉をスタートさせ、「アジア通貨基金」構想でもイニシアチブを取ろうとしています。日本政府は対照的にアジア外交に無策である。内外の危機状況を打開するには、アジアのリーダーとして今こそ期待される時はありません。

 多面的な研究を通じて、中国理解を深め、ひいては日中友好を増進することが学会の責務の一つであることは言うまでもありませんが、すすんで学会のイニシアチブで、「日中関係」の共同研究の組織化や各種啓蒙的活動も必要な段階にきたと思います。今後学会として多様な活動を具体化するとともに、個々の学会員の研究・啓蒙活動をしやすいような体制づくりが必要であると思われます。(2001年11月10日)


現代中国学会のホームページ開設について

村田 忠禧(横浜国立大学)E-mail t-murata@dh.catv.ne.jp

 6月から谷垣真理子、土田哲夫、宮尾正樹、村田忠禧(以上関東部会)、瀬戸宏(関西部会)、新谷秀明(西日本部会)の6名でワーキンググループを組織し、電子メールで学会としてのホームページの内容についての意見交換を行ったうえ、8月2日から村田忠禧のNIFTYにおけるホームページ無料使用領域を利用して、今年度の学会全国学術大会の内容などを中心にホームページ試行版を開設してきました。10月19日の全国理事および20日の総会で承認されたことで正式に学会のホームページが立ち上がったことになります。とりあえず現在もURLは村田忠禧のニフティにおける無料使用領域(http://homepage2.nifty.com/t-murata/)を利用していますが、いずれ学会としての公式URLを取得する予定です。なおこの原稿を書いている11月11日現在で458人のアクセスがありました。まだアクセスしていない方はぜひ上記URLにアクセスしてください。YAHOO Japanで現代中国学会を検索してもトップに出てきます。

 内容としては1)全国学術大会のプログラム紹介、2)関西地区研究集会の紹介、3)学会の沿革と概要紹介、4)学会規約、5)役員一覧、6)入会を希望される方へ、7)学会誌『現代中国』目次紹介(61号以降)、8)ニューズレターバックナンバー、9)全国学術大会一覧、を掲載しています。大会プログラムには各報告の要旨も新たに追加されましたので、大会に参加されなかった方でもどのような報告がなされたのかを知ることができます。

 ホームページを積極的に活用すれば学会は時間的、空間的な制約からかなり自由な活動ができるようになります。ホームページは生き物。われわれはまだ産声を上げたにすぎない段階です。ぜひ会員各位の積極的な取り組みをお願いいたします。

 とりあえず現段階で会員各位にご協力をお願いしたいことは「関係リンク集」というまだ手をつけていない分野への情報提供です。関係リンク集は本学会会員の情報交換のために役立つ場にすることを目標にしています。具体的なこととして

 第一にすでにホームページを開設されている会員のURLを紹介したいので、該当者はぜひURLを村田までお知らせください。

 第二には会員が関わる各種の研究会活動の情報を紹介します。必ずしもわが学会の活動ではなくとも、学会の主旨に反しないかぎり積極的に公開して会員間の交流に役立てたいのでぜひさまざまな情報をお寄せください。論文・著作など研究成果の紹介も歓迎いたします。

 もう一つ、「入会を希望される方へ」という部分で入会申込書がダウンロードできるようにしてあります。学会規約も公開されていますので、入会を希望される方がいらっしゃったらそれらを活用してください。

 今後、ニューズレターは全会員向けに発行されることになりますが、それを印刷物として郵送していたのでは労力も資金も大変です。そこで可能な会員には電子メールでニューズレターの発行をいたします。その際の会員のメールアドレスを随時受け付ける場としてホームページに村田忠禧宛に電子メールが送信できるようにしてあります。そちらに会員のお名前、所属、メールアドレスをお知らせください。またその他変更事項が発生した場合にも、このメールアドレスにお知らせください。責任をもって事務局のほうに転送し、処理してもらうようにいたします。

 今後、学会ホームページが成長していけば、時間や空間を越えた、さらには国境をも越えたさまざまな研究活動の展開が可能になります。ぜひ会員各位の積極的な関与で、新鮮で活力あるホームページに育て上げるようご協力をお願いいたします。


☆学会全国ニューズレター発行について

瀬戸 宏(摂南大学)

 高橋満理事長の巻頭言にもありますように、現中学会全国ニューズレターを今回から発行することになりました。第一号の筈なのに、なぜ第五号なのか、という疑問を持たれる方もいらっしゃるでしょう。発行に至る経過と今後の予定について、説明させていただきたいと思います。

 関西部会は二〇〇〇年三月よりニューズレターを創刊し、二〇〇一年八月までに計四号を発行しました。このニューズレターは郵送料の関係で、関西部会が管轄してきた西日本(愛知・岐阜・富山以西)在住会員および東京地区の理事に配布してきました。全会員の三分の一強に配布です。バックナンバーは全文がホームページに転載されています。

 ニューズレター発行は、関西部会活性化に大きな役割を果たしました。ここ数年、関西部会が春・夏に開催する研究集会には毎回百名前後の参加者がありますが、これもニューズレター発行と無関係ではないと思われます。

 昨年、九州を中心とした西日本部会が関西部会から分離して立ち上がりました。西日本部会からの申し入れにより、ニューズレターは四号から関西・西日本部会ニューズレターとなりました。関西地区役員より、そうであるなら全国ニューズレター発行をめざせないか、関西部会ニューズレター発行には相当な労力を費やしているが、これが西日本地区会員・東京理事のみの配布になっているのは惜しいという声が出されました。

 現中学会の活動をより強化するためには、全国ニューズレター発行は不可欠です。しかし、現在の全国事務局からは諸般の事情でニューズレター発行は困難との意見表明がありました。六月二日の常任理事会などで協議した結果、すでにニューズレター発行の実績のある関西事務局が全国理事会・事務局から委託を受けて編集・発行することが決まりました。号数は、関西部会ニューズレターの号数を引き継ぐことも確認されました。

 この方針は、理事会および本年度全国総会で正式に決定されました。当面は、十二月、四月、八月の年三回発行予定です。全文がホームページに転載されます。

 関西部会ニューズレターは、春・夏の研究集会全発表の要旨を報告者に集会終了後に執筆していただき、掲載してきました。本号にも全国大会報告要旨の掲載を検討しましたが、全国大会の場合は研究集会と異なり別に報告要旨集が発行され参加者に配布されていること、報告要旨集は全文がホームページに転載される予定であることなどから、今号は見送られました。来年以降は、自由論題各部会、共通論題の状況を的確に報告できるよう工夫したいと思います。また『現代中国』は研究年報としての性格を強め、報告要旨は今後掲載しないことも確認されています。

 今号は、全国ニューズレターとして過渡的な号のため分量的にも薄いものになりましたが、次号以降は少しずつ充実させていきたいと思います。ホームページとの有機的連携も、考えなければなりません。会員の皆様のご支持をお願い申しあげます。ニューズレターに関するご意見は、事務局または担当者である瀬戸宏までお知らせください。


新入会員紹介

*前回紙幅の都合などで掲載できなかったものの紹介です。

田淵陽子(大阪外国語大学大学院言語社会研究科博士後期課程:モンゴル近現代史)

 私の研究は、1945年8月終戦前夜に東アジアの国際社会で表面化したモンゴルの独立問題と民族運動を取り上げ、モンゴル近現代史の文脈から1945年という時間軸の多角的分析を試みています。つまり、当時のモンゴル人民共和国の独立問題と対日宣戦布告にともなう内モンゴル地域への進軍、そして内モンゴル地域における民族運動等を連関させ再構成してゆきたいと考えています。内モンゴルではとりわけ地理的歴史的にも独自の背景をもつフルンブイル(呼倫貝爾)地域に着目しています。激動のモンゴル20世紀史が常に大国の政治的影響の下にあったことは言うまでもありませんが、モンゴル地域の自律性が東アジア国際政治社会のなかにいかにリンケージさせられていったのか、その諸相に迫りたいと思っています。

 モンゴル国では民主化に伴いアーカイヴス資料の公開がはじまりつつあります。しかし当初は、誇り高き伝統的騎馬民族の血を継承するモンゴル人職員を相手に、希望資料の閲覧交渉を行うことすら私にとって困難極まるものでした。もちろん時の運も大きな要因として立ちはだかっています。そうしてやっと新しい資料に出会うたび、実は迷宮入りしてゆくのが現状です。

劉建雲(島根県立大学総合政策学部非常勤講師:近代日中関係史)

 このたび入会させていただきました劉建雲です。

 中国東北師範大学での修士論文は芥川龍之介の歴史小説を取り上げました。日本語教育の職場(北京、北方工業大学)に就いてから、関心は中国人に対する日本語教育と変わり、1994年より岡山大学大学院に留学し、まず言語教育の本質や日本語の教授法について勉強しました。後に清末中国人の日本語認識・日本語学習に研究を絞り、次のような公表論文をもとに「清末の同文館と東文学堂に関する研究中国における日本語教育史の視点から」という学位論文を完成し、今年三月、七年にも及ぶ長い留学生活に終止符を打ちました。

 ◎「ある清末外交官の日本語研究―黄遵憲の『日本国志』を中心に―」『岡山大学大学院文化科学研究科紀要』第6 号 1998年

 ◎「清末東文学堂についての一考察―中国人設立の東文学堂と日本語教育を中心に―」『岡山大学大学院文化科学研究科紀要』第8号 1999年

 ◎「清末の日本語教育と広州同文館」『中国研究月報』1999年12月号(No.622)

 ◎「福州東文学堂をめぐる日中関係」『アジア教育史研究』第9号 2000年

 ◎「清末中国における東本願寺の東文学堂」『岡山大学大学院文化科学研究科紀要』 第10号 2000年

 ◎「清末の北京東文学社―教育機関としての再検討―」『岡山大学大学院文化科学研究科紀要』第11号 2001年

 今後は清末における日中間の多様な教育関係をより広い視野から見直していきたいと思っておりますが、会員の先生、先輩方にご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

全国総会報告

本年度全国大会参加者は計193名(開催校調べ)。

1.次期全国大会は新潟大学に決定。

2.選挙管理委員選出

青野繁治(大阪外大)、芦田肇(國學院大)、白井重範(東京大院生)、趙宏偉(法政大)、福家道信(近畿大)

3.その他、予決算、ホームページ開設、ニユーズレター発行などが承認された。


ニューズレター配布についての重要なお知らせ

 これまでニューズレターは該当地区全会員に郵送してきました。本号より全国ニューズレターになり、約七百部を郵送するのは送料などが大きな負担になります。理事会などで検討した結果、次号からはメールアドレスを持っている会員には、原則として全員電子メールで送付することになりました。ニューズレターは、今後もホームページに全文転載されます。紙媒体での送付を希望する会員には、これまで通り郵送することにいたします。メールアドレスを事務局にまだ届け出ていない会員および郵送を希望する会員は、事務局または村田忠禧理事(t-murata@dh.catv.ne.jp)までお知らせください。


 

各地域部会の予定


関東部会

冬季研究会 二〇〇二年一月十九日(土) 東京大学教養学部(駒場)

テーマ 中国・台湾のWTO加盟問題(仮題) 報告者 交渉中

関西部会

春季研究集会 二〇〇二年三月二日(土) 大阪市立大学文化交流センター  

*大学院在籍者対象。今回は発表者の公募をします。詳細は関西部会まで。

西日本部会

三月上旬に若手の研究者を中心とした研究報告集会をもつ予定で準備中。詳細は十二月に開催される事務局会議で決定し、会員に通知します。

組織状況 *遺漏がありましたら、事務局、村田理事までご連絡ください。

現在会員数 686名(2001年9月30日現在)

新入会員  大西康雄(日本貿易振興会アジア経済研究所)、田島英一(慶応大学)、金野純(一橋大院)、須山純一(関西外大)、小林朝美(大東文化大院)、龍世祥(金沢経済大)、田淵陽子(大阪外大院)、吉村澄代(京都大院)、久野輝男(山本学園)、斎藤俊博(神戸大院)、桜井次朗(名古屋大院)、高端秀樹(神戸大院)、田中剛(神戸大院)、菅原慶乃(大阪大院)、鎌田純子(関西大院)、西槇偉(愛知県立大)、勝呂崇史(大阪市大院)、梶谷懐(神戸学院大)、鈴木陽子(東京都立大院)、藤原裕子(立教大学)、劉怡(東京都立大)、賈笑寒(大阪外語大院)、吾妻智子(大阪外語大院)、張黎(大阪産業大)、樋泉克夫(愛知県立大)、牛嶋憂子(所属なし)佐藤普美子(駒沢大)、劉建雲(岡山大院)、赤羽陽子(日本大学非常勤)、溝口歩(神戸大院)、渡辺直士(大阪外語大院)、坂井田夕起子(愛媛大非常勤)、島由子(大阪外語大院)、日野みどり(大阪外語大院)、趙国ケ(神戸商科大院)、藤野真子(富山大)、横山政子(大阪大院)、神尾智彦(東京学芸大)、曹瑞林(立命館大)、奥村哲(東京都立大)、木村泰枝(関西大院)、朱良瑞(大阪市大)、牧野格子(関西大院)、内藤二郎(神戸商科大院)、五味久壽(立正大)、張軼欧(関西大院)、馬成三(静岡文化芸術大)、潘秀蓉                       計48名

                               

退会者  山口一郎、西村嵩夫、大木康、藤井昇三、芦田茂幸、泉鴻之、中田睦子、曹淑卿、河池重蔵、志村規矩夫、中村義、山田茂、福地桂子、松本昭、林学忠、宋力、章政、狭間直樹、林泉忠、天児慧、平野絢子         計21名

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日本現代中国学会  http://homepage2.nifty.com/t-murata/ 

全国事務局(関東事務局を兼ねる)

153-8902 都内目黒区駒場3-8-1 東京大学教養学部中国語研究室気付

電話 03-5454-6420 *学会名簿記載の5454-6424は誤り  E-mail :(現在準備中)

(連絡所)

112-0012 都内文京区大塚6-22-18 社団法人中国研究所

電話 03-3947-8029 FAX 03-3947-8039

関西部会事務局 

562-8558  箕面市粟生間谷東、大阪外国語大学・西村成雄研究室気付

TEL.FAX  0727-30-5242  または072-848-3424

E-mail  :  tetsuyama@pop02.odn.ne.jp(総務・全般) ir8h-st@asahi-net.or.jp (編集)       

 

西日本部会事務局

814-0180 福岡市城南区七隈八丁目19-1福岡大学人文学部・山田敬三研究室気付

TEL:092-871-6631(代) Fax:092 -864-2864  E-mail :kyamada@fukuoka-u.ac.jp

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