第1報告(13:00〜13:50)
「内蒙古牛乳業の広告戦略」
蘇林・伊藤昭男(北海商科大学)
本研究の目的は、広告行動の観点から「内蒙古蒙牛乳業(集団)股?有限公司(以下、「蒙牛」)の競争戦略を考察することである。中国の乳製品業界における急成長企業である「蒙牛」は、活発な広告行動で知られている。食品や飲料・嗜好品などを扱う産業は、これまで広告によって需要が大きく左右される産業とみなされることが多く、広告投資額は他産業に比して高い傾向がみられる。また乳製品のような経験財(食べないと味がわからない食品などの財)は、探索財(カタログなどその品質を消費者が購入前に何らかの形で調べられる財)と違ってどれほど詳しい説明をしても真の品質を伝えることのできない性格を有しており、まず買わせることを重視した説得的な広告がなされるとの指摘がある。「蒙牛」に関しては新興企業ということもあり、日本における研究は、筆者らの研究を除いてほとんどなく、まして広告行動からみた競争戦略は皆無である。本研究では広告戦略の基本的考え方をまず整理し、次いで「蒙牛」の広告活動をその経緯の観点から総合的に把握する。その上でそれらを踏まえて「蒙牛」の競争戦略としての広告活動を考察し、結果をまとめる。得られた考察結果のまとめは次のとおりである。
1)「蒙牛」の競争戦略は、当初はコストリーダーシップ戦略が用いられたが、徐々に差別化戦略への移行がみられる。また、既に市場において一定の地位を確立した「伊利」ブランドを活用した「ブランド拡張戦略」を用いた点にも戦略的特徴が認められる。
2)「蒙牛」の差別化戦略は、安全性・クリーン・新鮮さ、価格、おいしさ・味などといった単一のマーケティング要因に主眼をおいたものではなく、「蒙牛」という多様なマーケティング要因を有する企業そのものを宣伝・広告するという戦略を主としており、この点から「蒙牛」の広告行動からみた競争戦略の本質は、「蒙牛」そのものの差別化につながる「企業ブランド戦略」を志向したものであることが確認された。
3)「蒙牛」のブランド戦略を成功に導いた重要な要因として、トップのブランド戦略に対する認識と姿勢があげられよう。「蒙牛」において牛根生総裁が発揮したリーダーシップは、ブランド戦略および「蒙牛」成長の重要な成功要因であると認められる。