第3報告(13:50〜14:40)
「中国共産党支配地域における日本人留用の諸相:1945-1950年代」
鹿錫俊(大東文化大学)
1945年日中戦争が終焉した後、中国大陸は国民党支配地域と共産党支配地域に二分された。まもなく開始した国共内戦の中、多くの日本人は国民党側と共産党側に別々に徴用され、従軍医師や看護士、鉄道や工場の技術者などとして使われた。中国では彼らを「留用者」と呼ぶが、周知の政治的要因によりその真相は長年封印されたままであった。そして、1980年代から日中国交正常化30周年記念に至る「日中友好」が強調された時期に、共産党側に留用された日本人については「新中国の誕生に貢献した」理由で言及され始めたが、当事者の回想録や関係者への取材といった類のものがほとんどであり、学術的な論考は未だに極めて少ない。本報告では、学術振興会科学研究費補助金(課題番号14402010)のもとで進めてきた実地調査を基に、主として中国側の一次資料に依拠して、次の諸点を中心に共産党支配地域における日本人留用の実態を考察する。@共産党側における日本人留用政策の形成過程。A留用者に対する教育と管理の特色。B留用された日本人の役割。C共産党側原資料における日本人像。D内外圧力下の選別と送還。E留用研究をめぐる今後の課題。
なお、国民党支配地域における日本人留用については、報告者は「国民政府による日本人技術者留用の政策過程」と題する論文を「第5回中華民国史国際学術会議」(2006年7月・中国)に提出した。内容は以下の5節である。@戦後接収と境内日本人に対する初期の方針。A三原則と具体的処置。Bアメリカの干渉と中国側の対応。C10月会議と留用政策の修正。Dその後の展開。本報告の姉妹編にあたるものなので、合わせて御参照下さることを切望する。