第3報告(13:00〜13:50)
「中国北京市の高齢者施設の入居者に関する研究」
横浜勇樹(三重中京大学)
 人口の高齢化問題は日本のみならず隣国、中国でも深刻な問題となっている。現在、社会保障制度が構築されつつある中国では農村地域はもちろんのこと、一人っ子政策の影響や共働き世帯が一般的な大都市でも深刻な問題となっている。中国政府は地域の福祉サービスを補完する機関として1986年から民生部が中心となり、地域に「社区福利服務中心」を設置、推進しているが、設置が都市部に限られていること、財源、サービス内容の問題など検討しなければならない課題も多い。そしてまたこの「社区福利服務中心」の進展と相まって「老人ホーム」などの入所施設の建設も進展しつつある。2002年度末現在、北京市内の老人施設(敬老院、養老施設、ケア付きマンション、托老所を含む)は公設、民設を含め314施設・25.599床あるが、その規模、サービス内容などは統一されていない。その理由は未だ明確な法的規制がないこと、そして施設設置に関わる土地の確保が難しいことなどがあげられる。
今後、中国の高齢者問題を考えるとき、「老人ホーム」のような入居施設はどのように進展していくのだろうか。このことを考えるため、現在の施設にはどのような状況の高齢者が入居しているか調査し、分析することとした。
調査は、2004年8月16日〜8月20日にかけて、北京市内の標準的な高齢者入所施設(東城区和平里街道?事?敬老院、東直門街道敬老院、海淀区四季青郷敬老院)を選定し、調査に協力していただける高齢者100人に対して、@施設の状況、A施設入居者の状況、B施設入居者の施設利用について、C自由記述、の4項目について聞き取り調査をおこなった。
その結果、入居者の多くが毎月「1500元以下」の収入があり、全体のおよそ50%が「養老保険」からの収入であった。また40%が「子どもからの支援」を受けていた。入居の理由は「自分の意思」が45%と最も多く、全体の70%が「将来、子どもとの同居を希望しない」としていた。さらに、身体・精神的状況は、およそ90%のものが「ほとんど自立」であり、30%が「高血圧」「心臓疾患」など、なんらかの疾病を抱えていることがわかった。本報告では、これらの結果を踏まえて考察をおこなう予定である。