第5報告(15:50〜16:40)
「河南省の観光産業――地方政府の観光政策を中心に」
栄欣(大東文化大学大学院生)
本報告では、河南省の改革開放から今日までの観光政策の制定と変遷を整理し、近年盛んに議論されている政府の「観光産業支柱産業」政策を中心に考察する。
中国では、1998年の「中央経済活動会議」で、「観光産業」は「新たな経済成長点」と定められ、現在、多くの省・自治区・直轄市が観光産業を「支柱産業」または「重点産業」「先導産業」と定めるまでに至った。こうした「観光支柱産業ブーム」に引き込まれたように、筆者の出身地でもある中部地方の河南省は「第十次五カ年計画」の中で、観光産業を「支柱産業」と定めた。
筆者は2001年まで河南省で観光会社を経営して五年ほど観光業界に携わってきた。河南省のGDP規模は中位にランクされているが、実際には多くの観光資源を保有し、「観光資源大省」と言われる。地理的に恵まれ、交通便利で、観光資源が豊富にあり、これらは河南省を迅速に重要な観光地に発展させる潜在的条件になっている。しかし、現実には河南省の観光産業は全国的に見て、まだ立ち遅れている状態にあると言わざるを得ない。河南省を代表とする中西部内陸地域では、経済基盤が整っていない現状の下で、観光産業に一方的に偏るのではなく、地域の産業構造を検討し、各種業種とのバランスを取りながら観光産業の発展を目指すことが地域の開発にとって最良の方法ではないかと思う。
本報告では、事例と選定した河南省の改革開放から今日までの観光政策を考察し整理した上、現在の「観光産業支柱産業」ブームに影響されている地方政府の観光政策の適度性を明らかにしていく。
本報告の構成は以下のとおりである。1・河南省観光の現状 2.改革開放以後の観光政策 3・観光支柱産業論への是正 4・結論と今後の課題