第4報告(15:00〜15:50)
「中国の水価格変動と水資源の合理的利用――北京・天津を事例にして」
興津正信(大東文化大学大学院生)
本報告では、中国の水問題と経済の関係を近年研究が盛んに行われている水価格の変動を中心に考察する。
1949年建国後の中国における水価格政策の出発点は、1965年10月に公布された「水利工程水費の徴収、使用と管理試行方法」である。しかし、制定後、まもなく文化大革命が勃発するなど政治的混乱もあって、水価格が定着することがなかった。79年の改革開放以後、経済発展にともなって水資源の需要が急激に高まった。65年制定された法律がありながらもほとんど無償あるいは廉価の水価格になっていたため、水の浪費問題が深刻になってきた。そこで改めて水価格の見直しが始まり、有償給水の重要性が強調されるようになった。1985年7月に「水利工程水費用の査定、徴収と管理方法」が公布された。その後、1997年10月に「水利産業政策」が着手された。これは水環境保護と経済開発について総合的に取り組むための政策であり、水価格についての規定も設けられた。2002年8月には「中華人民共和国水法」(1988年公布)が改正された。そして、2003年7月にはこれらの経験を通して「水利工程給水価格管理方法」(以下、「水価方法」)が公布された。こうして給水価格の決定基準が明確になった。そして「水は有償である」という概念が社会的コンセンサスとなりつつある。
水資源の合理的な再配分、持続可能な水資源利用を考える場合には、水の価格制定は重要な課題となる。建国後の用水構成比を見ると、長期にわたって農業用水の比率は工業用水や生活用水よりも圧倒的に高かった。水価格の制定においては歴史的に農業用水の価格が優先的に定められた。今後は、産業活動の発展、生活水準の向上によって農業用水だけではなく都市の水資源利用をめぐる価格設定が重要になっていくであろう。
本報告では、「水価方法」制定以後における水価格の変動を明らかにしていく。北京市・天津市を対象地域に選定する。
報告の構成は以下の通りである。1.「水価方法」のあらまし 2.北京と天津の水価格変動 3.「水価方法」の実施状況についての考察 4.今後の課題と結語。