第53回日本現代中国学会全国学術大会・総会

<日 時>
2003年10月18日(土)
☆自由論題報告

午前9時30分(受付開始9時)〜午後4時40分
☆総会
午後4時40分〜午後5時30分
  会場 10F会議室
  理事長挨拶 坂元ひろ子(一橋大学)
  議事:会務報告、決算・予算案など
☆懇親会 
午後5時30分〜午後7時30分


2003年10月19日(日)
☆共通論題報告・全体討論
午前10時(受付開始9時30分)〜午後4時50分

<会場> 
大阪市立大学学術情報総合センター



<大会プログラム>

第一日 10月18日(土)自由論題
(於:学術情報総合センター)

第1分科会 政治・法律分野(10階、研究・交流ゾーン)

座長 王晨(大阪市立大学)
◆第1報告(9:30〜10:20)
「中国・西双版納タイ族女性の役割
―計画出産とリプロダクティブ・ヘルスの狭間で」
磯部美里(愛知大学大学院中国研究科院生)

◆第2報告(10:20〜11:10)
「日中国交正常化30周年に対する日中新聞メディアの認識―
日中主要新聞紙の関連報道の比較を通じて―」
董宏(慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科院生)

◆第3報告(11:10〜12:00)
「「バンドン会議」と「周恩来」外交」
史文(大東文化大学大学院法学研究科院生)
 
【昼の休憩 12:00〜13:00】

座長 通山昭治(九州国際大学)
◆第4報告(13:00〜13:50)
「国際人権条約への中国的評価および対応」
石塚迅(日本学術振興会特別研究員)

◆第5報告(13:50〜14:40)
「中台関係における香港の役割」
松田康博(防衛庁防衛研究所)

【小休憩 14:40〜14:50】

座長 西村幸次郎(一橋大学)
◆第6報告(14:50〜15:40)
「中国環境影響評価法制定の背景と施行面での課題」
北川秀樹(龍谷大学法学部)

◆第7報告(15:40〜16:40)
「中国の基層選挙改革」(仮)
史衛民(中国社会科学院政治学研究所研究員、政治制度研究室主任)


第2分科会 経済分野 (10階、研究・交流ゾーン)

座長 辻美代(流通科学大学)
◆第1報告(9:30〜10:20)
「在中日系企業の経営戦略の転換 ―IT産業を中心に―」
羽渕貴司(大阪市立大学大学院経営学研究科院生)

◆第2報告(10:20〜11:10)
「中国の水不足と経済対策―水価格の問題を中心に」
興津正信(大東文化大学大学院アジア地域研究科院生)

◆第3報告(11:10〜12:00)
「中国における労働力の産業構造変化の要因分析」
胡秋陽(神戸大学大学院経済学研究科院生)

【昼の休憩 12:00〜13:00】

座長 大島一二(東京農業大学)
◆第4報告(13:00〜13:50)
「中国地方政府財政の現状と課題―郷鎮政府財政を中心に―」
高屋和子(大阪市立大学大学院経済学研究科院生)

◆第5報告(13:50〜14:40)
「中国農民の生育・教育・職業選択の経済分析」
厳善平(桃山学院大学経済学部)

【小休憩14:40〜15:00】

座長 田島俊雄(東京大学)
◆第6報告(15:00〜15:50)
「中国の外資直接投資導入と外資系企業の進出戦略行動」
片岡幸雄(広島経済大学)

◆第7報告(15:50〜16:40)
「中国鉄鋼業の構造分析」
杉本孝(大阪市立大学大学院創造都市研究科)


第3分科会 社会分野(10階、研究・交流ゾーン)

座長 松村嘉久(阪南大学)
◆第1報告(9:30〜10:20)
「巡礼から観光へ―チベットにおける国際交流形態の変容」
呉越芳(杉之内税務不動産鑑定事務所)

◆第2報告(10:20〜11:10)
「中国障害児教育の改革」
真殿仁美(神戸大学大学院総合人間科学研究科院生)

◆第3報告(11:10〜12:00)
「上海における日系企業進出の状況と「海帰族」の動向
―華商ネットワークの新たな展開像をめぐって―」
北原恵(大阪外国語大学大学院院生)

【昼の休憩 12:00〜13:00】

座長 宇野和夫(早稲田大学)
◆第4報告(13:00〜13:50)
「宗族村落における姻戚・近隣・擬制的親子関係の意義
(父系出自原理とのかかわりにおいて)−山東半島宗族村落の事例から」
大沢幸一郎(早稲田大学大学院人間科学研究科院生)

◆第5報告(13:50〜14:40)
「インフォーマル・セクターの就業構造―重慶市「棒棒軍」を事例に」
小原江里香(津田塾大学大学院国際関係学研究科院生)

【小休憩14:40〜15:00】

座長 徳岡 仁(城西国際大学)
◆第6報告(15:00〜15:50)
「孫志剛事件にみた中国社会の"弱勢群体"の現状」
チョウ アルバート(富士フェニックス短期大学)

◆第7報告(15:50〜16:40)
「中国近現代における母子衛生政策の展開について」
小浜正子(鳴門教育大学)


第4分科会 歴史分科会(5階 AVホール)

座長 金丸裕一(立命館アジア太平洋大学)
◆第1報告(10:00〜10:50)
「戦争における日本と中国の相違点について」
 高鵬飛(明星大学)

◆第2報告(10:50〜11:40)
「台湾におけるポストコロニアル問題の一考察」
張原銘(立命館大学大学院社会学研究科院生)

【昼の休憩 11:40〜13:00】

座長 内田知行(大東文化大学)

◆第3報告(13:00〜13:50)
「民国知識人の位置づけに関する一考察 
―張君?と『国立自治学院』を中心として」
原正人(一橋大学大学院社会学研究科院生)

◆第4報告(13:50〜14:40)
「国民政府時期商会改組にみる奉天都市社会と地方権力」
上田貴子(日本学術振興会特別研究員)

【小休憩14:40〜15:00】

座長 田中仁(大阪外国語大学)
◆第5報告(15:00〜15:50)
「国民政府の日本人捕虜と日中戦争 
―収容所『敵国人死亡診断書』を分析する」
水谷尚子(中央大学非常勤講師)

◆第6報告(15:50〜16:40)
「抗日戦争時期、中共・八路軍の軍事活動
―山東抗日根拠地を中心にして」
馬場毅(愛知大学)


第5分科会 文学・思想分野(1階 文化交流室)

座長 宇野木洋(立命館大学)
◆第1報告(9:30〜10:20)
「双百政策と毛沢東再考」
梅村卓(上智大学大学院文学研究科院生)

◆第2報告(10:20〜11:10)
「英雄像構築とその変化---二つの歌劇『劉胡蘭』をめぐって」
関浩志(筑波大学大学院生)

◆第3報告(11:10〜12:00)
「文革期文学の構築
――『人民日報』(1976.10−1978.12)での四人組批判を材料に」
溝口喜郎(九州大学大学院比較社会文化学府院生)

【昼の休憩 12:00〜13:00】

座長 北岡正子(関西大学)
◆第4報告(13:00〜13:50)
「呉?人社会小説の方法――『発財秘訣』を中心に」
范紫江(大阪市立大学非常勤講師)

◆第5報告(13:50〜14:40)
「魯迅「補天」と魯迅訳・武者小路実篤『或る青年の夢』」
賈笑寒(大阪外国語大学大学院院生)

【小休憩14:40〜15:00】

座長 白井啓介(文教大学)
◆第6報告(15:00〜15:50)
「'60年代初期における「喜劇電影問題討論」が持つ意義」
好並晶(関西大学非常勤講師)

◆第7報告(15:50〜16:40)
「<われわれ>から<わたし>への転換
−改革開放以降の中国映画作家にみるアイデンティティ形成の一例」
菅原慶乃(大阪大学大学院言語文化研究科院生)


第二日 10月19日(日)共通論題
(於:学術情報総合センター)

「世界のなかの中国
―強権体制・経済発展・地域格差・社会不安の先は―」


午前の部 10時〜12時
座長 飯塚 容(中央大学)
歴史・思想(10時〜11時)
報 告 者  緒形康(神戸大学)
コメンテーター 砂山幸雄(愛知大学)

文学(11時〜12時)
報 告 者  吉田富夫(佛教大学)
コメンテーター 岩佐昌ワ(九州大学)

【昼の休憩 12時〜13時】

午後の部 13時〜15時
座長 石田 浩(関西大学)
政治・経済 (13時〜14時)
報 告 者  菱田雅晴(静岡県立大学)
コメンテーター 園田茂人(中央大学)

経済 (14時〜15時)
報 告 者  川井伸一(愛知大学)
コメンテーター 上原一慶(京都大学)

【小休憩 15時〜15時10分】

◆全体討論(15時10分〜16時40分)

◆閉会





日本現代中国学会第53回全国学術大会共通論題を企画するに当たって
「世界のなかの中国
―強権体制・経済発展・地域格差・社会不安の先は―」



21世紀中国をどのように理解するのか。これは私たち中国研究者に課せられた共通
の研究課題である。1949年10月に中華人民共和国が成立し、中国研究者の多くはこ
れに共鳴し、中国の政治や経済・歴史・文学等について研究し議論してきた。しかし、
この五十数年間に中国の政治・経済・社会は大きく変貌し、「社会主義」が高々と掲げ
られた時期もあったが、文化大革命後にその実情が明らかになるに従い、「社会主義」
や「人民中国」といった理念は何処かに消え去ってしまった。そして、改革開放路線に
よる華々しい経済成長のみが取り上げられるようになり、過去の歴史認識を踏まえた
研究は少なくなった。つまり、中国政府や中国共産党が掲げた理念や政策・スローガ
ンは変化し、それに呼応するかのように中国研究者は自己変貌し、研究課題も変化し
てきたともいえる。
 中国共産党政府は今なお「社会主義」を標榜し、その一方で市場経済化を促進し、
労働力を商品とみなし、熾烈な競争原理を導入することで21世紀に生き残りをかけて
いる。
2001年12月に中国はWTOに加盟して、世界経済という枠組みでの経済活動に参入し、
先進諸国との国際競争に勝ち残るための模索を続けている。いわば、毛沢東時代の「中
国の世界」から 小平時代の「世界のなかの中国」へと大きく転轍してきた。さらに、昨年
の第16期共産党大会では胡錦濤らの第四世代の指導者が選出され、前総書記江沢民
の「三つの代表」に基づき私営企業経営者の共産党加入を認めた。このような中で、中
国は「世界の工場」として外資を積極的に吸収し、昨年の外資導入額はアメリカを抜いて
世界第一位となった。その結果、低迷する世界経済のなかにあって中国のみが7〜8%
の経済成長率を誇り、沿海大都市住民の生活水準は向上し、消費生活の華々しさには
目を見張るものがある。その一方で、国有企業のリストラが大胆に行われ、競争に敗れ
た郷鎮企業は倒産したり、沿海都市と内陸農村との経済格差は拡大し、内陸農村の困
窮ぶりは相も変わらず、労働者や農民・市民の社会に対する不満が燻っている。中国共
産党政府は人民の剥き出しの物質欲を容認してそれを経済活力とする一方、権力に抵抗
する者には強権でもって弾圧する。つまり、事実上の一党支配体制を維持したままの経
済開発を目論んでいる。それは今回のSARS隠しとその対処においても如実に現れた。
確かに時代に迎合してその恩恵を被る役人・経済人・知識人や、ビジネスチャンスを得て
自己の物質欲を満たす者がいる一方で、貧困生活に喘ぐ人々もおり、またこれまで歩んで
きた市場経済を後戻りさせることができないのも確かである。しかし、地域格差や社会不安
に対する諸問題に対して、共産党政府はこの矛盾を一体どのように解決しようとしているの
か、また私たち中国研究者は一体何を主張できるのであろうか。
 私たち中国研究者が既存の枠組みを超えて、客観的事実に基づいて現代中国の政治・
経済・歴史・文学を検証し、その抱える問題点を明らかにし、議論することは重要であり、こ
のような中国の現状を明らかにし分析しようとすることは「内政干渉」でも「対中批判」でもな
く、ましてや中国に「気兼ね」などする必要はない。本大会において各研究分野から現代中
国の構造的分析と、学術的に水準の高い熱気溢れる討論が行われることを期待したい。
                               2003年8月 大会実行委員会