歴史・社会―2

90年代以降における中国都市化の進展について

−産業構造転換とのかかわりを焦点に−

 

剛(東北大学大学院生)

 

  5回中国人口センサスによると、2000111日まで都市人口が45594万人に達しており、全国人口の36.09%を占めている。つまり、2000年には中国の都市化が36.09%となり、90年の26.23%を約10%上回っている。都市化の進展は都市人口の増加にとどまらずもちろん都市の数も増えている(人口10万人以下の小都市を除く)

 また、都市部個人所得の増加につれて都市部の生活水準が上昇しており、家計の消費構造もこの20年間極めて著しく変わっている。都市部においてエンゲル係数が91年の約54から2000年の約39へと低下してきたことは、食生活の改善を中心とした都市部の消費構造が変りつつあるのを表わしている。都市部ではカラーテレビ、冷蔵庫、洗濯機などの普及、マイカー、マイホームの新たなブームが耐久消費財の消費が都市部の消費に重要な位置を占めていることを裏付けているであろう。

こうした消費構造の変化が、輸入代替の展開に伴って国内産業構造の変動に結び付けられているといえる。すなわち、製造業においては80年代に入ってから電気電機産業、電子通信産業が急速に生産を拡大し、リーディング産業となってきた。対照的に紡績産業などは製造業に占めるウェイトが大きく減少している。いまは、中国がカラーテレビ、冷蔵庫、洗濯機などの家庭電化製品の生産で、日本、韓国を抜いてすでに世界の最大な国となっている。このような産業構造の変動がさらにいっそう重工業化を促しており、中国産業構造の国際的後進性を解消することができるようになったとみられる。

 ところで、中国において99年に人口10万人以上の行政都市は沿海地域によって約半分が占められており、都市の地理的分布が沿海地域に偏在している。こうした都市の分布構造も産業の分布構造に影響を与えているといえる。中国において産業生産の地域分布は沿海地域への集中が第二次産業、第三次産業で顕著に表れているのだけでなく、電子通信産業、電気電機産業などの生産も沿海地域に集積している。また、産業の従業構造をみれば沿海地域における第二次産業の従業人口、第三次産業の従業人口の割合とも中国全体のそれを上回っていることがわかる。

  特に中国の第三次産業の生産所得が2000年は78年の50倍となっている。90年代に入ってから、第三次産業の急成長は都市化が比較的に早く進んでいる沿海地域の経済発展に多いに貢献しているといえる。これによって国民経済の成長が進む中で、農業、鉱業、さらに製造業に代わってハイテク産業、サービス業が次第にその主役となってきた発展段階が示されている。その先頭に切ったのは北京市のほか、上海市、天津市などの旧工業都市や、深せん市、広州市などの急成長を果たした都市である。これは、沿海地域において都市化の進展に伴い工業部門にアクセスしやすい社会基盤が整備され、住民生活のよりよい環境が整っている総合的な発展地域へと転換してきており、沿海地域の都市が中国国民経済全体の知的産業化、サービス産業化を先導していることを物語っている。